浅間山南麓に展がる町
浅間山(標高二五六八メートル)は、長野県の東部に位置する日本屈指の活火山です。最近では噴火はありませんが、常に噴煙を上げ続けています。
いくつかの山によって構成される浅間山は、小ぶりで嶮しい左手の剣ガ峰、剣ガ峰の頂き付近から右手に向かって裾をたち上げ、山頂は水平に走り、なだらかなスロープを描いている前掛山が平地からは見えます。雄大にして秀麗、季節やその日の天候によって、一瞬のとき、思わずふうっと息をのんで感嘆することがしばしばあります。
浅間山の南麓に展がる御代田町には、八面玲瓏たる自然が多く残されています。
四月下旬、小川の水がぬるみコブシが白い花をつけるころ、百花繚乱の春の始まりです。福寿草、梅、桜、小手鞠草、水仙などがあでやかに咲き誇ります。
続いて、落葉松の芽吹きが始まります。
薄緑の新芽が伸びるにしたがって、町は深く豊かな緑に変わっていきます。
高原野菜の町
火の山の麓 白雨の中で別れた友よ
(中略)
追分 御代田 そして小諸へ来るともう雨の気もなかった
雨に濡れた窓硝子をあけながら浅間の裾を迂回してゆく
信越線をさびしいと思った
これは、四季派の詩人・田中冬二の『浅間の裾』から抜粋したものです。
御代田町は、県下有数の高原野菜の産地として発展してきました。殊に草越区をはじめとする伍賀地区は、その中心になっています。そこで生産されるレタスの瑞々しさ、歯切れの良さは格別で、高級ブランド品としての地位を確立しました。
湯川のすぐ北側に広がる台地は、一面レタス畑です。
透けるように明るい緑の列が、整然と続いています。北を望めば火の山。南に目を転じればすぐそこに緑豊かな平尾山系。今も生きていれば詩人の目には、どう映るでしょうか。
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